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芋焼酎は江戸時代から南九州で広く栽培されているサツマイモを原料とした焼酎です。味は濃厚で、しばしば独特の臭みがあるため好き嫌いが分かれますが、最近は匂いを抑えたものも作られています。鹿児島で生産される薩摩焼酎は協定により、原産地としての保護産地指定を受けています。
匂いがきつい、味に癖があるという芋焼酎に対する先入観を持っている人が、まだ多数だと思います。しかし最近の芋焼酎は非常に飲みやすくなっており、女性の方のファンが増えています。健康ブームと芋焼酎製造元の努力が認められてきているからでしょう。
「芋」と付くくらいですから、当然、芋焼酎の原材料となるものは、さつまいもです。その中でも一番多く使用されているのが、「黄金千貫」(コガネセンガン)という品種です。コガネセンガンは度重なる品種改良の甲斐あって、でんぷん質を多く含むさつまいもが誕生し、鹿児島で本格的に生産が始まりました。
焼酎ブームは現在も続いていますが、その中でも本格焼酎が人気を博しています。従来の一升瓶に入った焼酎ではなく、入れ物のボトルも非常にデザインに凝ったものが発売されていて焼酎人気に拍車をかけているようです。若者や女性の方もおしゃれなボトルに惹きつけられているのでしょうか。
そんな芋焼酎発祥の地といえば、もちろん鹿児島県。現在、鹿児島県に存在している焼酎製造元は約百件ほどあるといわれていて、その製造元のほとんどが芋焼酎を造っています。なにしろ、原材料であるサツマイモのコガネセンガンを栽培している土地柄ですから、納得できますね。
芋焼酎には人の体内で作られる血栓を溶解する働きが、他の酒類に比べて優れていることが最近の研究によって解明されました。もともと人の体は血栓溶解酵素を持っていますが、本格芋焼酎の成分の中にこの酵素と同様の働きをするものが含まれているのです。
従来からの芋焼酎の製法で使われていた蒸し芋を使用した麹は、芋麹をつくるための原料処理方法としては数点の問題があり、使い勝手が悪い上に、麹力価、とりわけ、でんぷんの分解力も米麹に比べて低く、麹として使用するためには効率が非常に悪いものだったそうです。
当初、芋焼酎は今のコガネセンガンのような芋焼酎専用のサツマイモを使っていたわけではありません。食用やでんぷん用に生産されたサツマイモを芋焼酎作りに用いていました。したがって味や香りも独特なもので現在のように全国的に普及するには至りませんでした。
さらに時代が下ると、米や麦、粟やキビなど焼酎の原料としていた経緯があったのです。特に米は年貢米としてお上に謙譲しなければならなかったために、とても貴重なものであったそうです。
原材料であるサツマイモをつくり、芋焼酎を生産している鹿児島県の人たちは当然のように昔から芋焼酎を愛飲しています。そして独特の香りと味を良しとしてきました。地元の人にとってはあの独特の匂いがなければ芋焼酎ではないと言い切る人も多いようです。それだけ芋焼酎に誇りを持っているのでしょうね。
芋焼酎を歴史的観点から見てみます。当時の農民が目を付けたのがサツマイモでした。十七世紀初頭に中国から日本に伝わり、十八世紀から本格的に栽培され始めたサツマイモを使って芋焼酎作りが本格化したようです。栽培された土地が薩摩(昔、九州南部に存在した国)であったことから、サツマイモと呼ばれるようになったというわけですね。
コガネセンガンは、芋焼酎を造るためには理想的なサツマイモであり、今まで栽培していなかった農家も昭和40年代の中頃になると、コガネセンガンを作り始め、鹿児島県内で作られる芋焼酎のほとんどがコガネセンガンを用いたものになりました。
芋焼酎が今のようなブームになるには、陰の努力がありました。あの独特な匂いを緩和させる研究が長年続けられていたのです。芋焼酎の研究者は改良に改良を重ねて、蒸留方法や、貯蔵方法などに工夫を凝らすことによって原材料のコガネセンガンの甘い香りがかすかに残る、フルーティな芋焼酎を開発することに成功したのです。
そして様々な試行錯誤を繰り返しながら、芋焼酎の蔵元では、飲みやすいといわれている本格芋焼酎の製造過程においては蒸し芋麹を使用せず、独自の製法で造った芋麹を使用することにより、芋全量使用の特長を十分活かしきった芋焼酎の製品化に成功しました。
人気の芋焼酎ナンバー1は、やはり森伊蔵、続いて魔王・伊佐美・佐藤黒麹・村尾でしょう。他の人気ランキングを見ると、赤兎馬(せきとば)・黒麹原酒36度・極の黒芋焼酎25度・芋焼酎霧島ゴールドラベルなどが上位を占めています。
最近になって芋焼酎も非常に飲みやすくなったものが流通しています。今の焼酎ブームの一端を担っているのは、このとても飲みやすくなった芋焼酎だといっても過言ではないでしょう。銘柄によっては、これが芋焼酎なのかと思ってしまうほどフルーティーなものもあるようです。
最新の製造方法で作られた芋焼酎は、従来の芋焼酎と違い、しっかりとした香りを持ち、麹に芋麹を使用することにより米麹由来の脂肪酸を特徴とする香りが無く、芋由来のテルペンを特徴とする香りが高くなっています。すっきりとした味わいと飲みやすい酒質の焼酎になっています。
ブランドにまでなった森伊蔵などのプレミアムが付いた芋焼酎は1.8Lで4万円~5万円ほどしますが、売れ筋の赤兎馬などは、3千円位で売られています。旨いと感じる本格芋焼酎の相場としては、1.8L入りで2千円から4千円ぐらいとなっているようです。
最後ですが、芋焼酎を貯蔵するために、シェリー酒やワインの貯蔵に使用していた樽や樫樽などを上手く利用して芋焼酎にシェリー酒やワインの香りを移すことによって、そこはかとなくなんともいえない香りを醸し出す芋焼酎を造ることができたことで、本格焼酎ブームが起こったということですね。